← Prev |
キョンの消失 二日目・午後七時 |
_ | _ | - * - わたしの真の姿を知る者は意外な所から現れた。 「わたしにとって、あなたとは久しぶりになります。キョンさん」 下駄箱のラブコールで公園に呼び出されたわたしは、朝比奈さん(大)に抱きしめられつつそう告げられた。 「また会えて、凄く嬉しい……わたしは、あなたと過ごしたこの時間をはっきり覚えていますよ」 そのいきなりの手厚く熱烈な歓迎に、流石のわたしも驚きを隠せないというより、もう少しで色々なものが限界突破してしまいそうな気分に落ちていた。 これは一体どういう事でしょう。未来での挨拶方法は実はこんなに情熱的だったのですか。 「そんな事ありません。ふふ、本当に、キョンさんなんですね。懐かしいです」 朝比奈さん(大)によるハッピータイムが終了した後、わたしは今回の件について聞かされた。 それによると、今この世界は古泉の予想通り改変されているらしい。 「改変された時間平面範囲は前回と同じ、改変された瞬間より過去三百六十五日です。 この時代のわたしは時空改変の影響を受けてて、キョンさんの姿に違和感をもってません。 ですが、わたしのいる未来は改変されなかった。だからこうしてわたしが真実を伝えに来られたんです」 という事は、朝比奈さんはわたしの本当の姿を知っているんですよね。 「はい。キョンさん、本当のあなたは男性です」 複雑な表情を浮かべて、朝比奈さんはわたしを見つめつつ答えてくれた。 そりゃまぁそうだろう。 男の知り合いが女の姿で居たらわたしだって驚くし、その相手に微妙な笑顔も浮かべてしまうだろう。 「それて、犯人は誰なんです?」 今回は長門まで記憶が改変されている。正直どういう風に対処するべきかわたしは迷っていたところだった。 わたしが尋ねると朝比奈さんは自分のひざの上で組んだ両手を見つめながら教えてくれた。 「今回の時間平面の改変を行ったのは涼宮さんです。それは間違いありません」 なんとまぁ、またアイツの仕業か。これは一度反省室でじっくり話し合う必要があるな。 わたしがそう考えていると、朝比奈さんは更に驚愕の事実を告げてきた。 「ですが、涼宮さんにこの改変を思いつかせたのは別の人です」 何ですって? つまり、時空改変のきっかけを作った真の黒幕は別の人物だと、そうおっしゃるんですか。 「……はい」 なるほど。ではまずソイツから反省室に送り込みましょう。 それで誰なんです。そんなハルヒに要らん事を示唆したアホな奴は。 「示唆した犯人は……キョンさん、あなたです」 ────何ですって? わたし? 「はい。キョンさんが、今回の発端なんです」 はっはっはっ。オーケー。なるほど、よくわかりましたよ朝比奈さん。 とりあえず反省室へはどう行けばいいんだったか、わたしは世界地図を心に思い出していた。 - * - 「今回の改変は『女だけの秘密』が原因なんです」 すいません、おっしゃっている意味が全くわからないのですが。 「キョンくんは下校時、いつも古泉くんと並んで帰っていました。 そして色々と話しては笑ったり、溜息を吐いたり、難しい顔をしたり。 正直、そういう姿をわたしにも見せて欲しかったなぁ、って今でも焼けるぐらいでしたよ」 わたしが、古泉と? いつも古泉はわたしたちの後ろを付かず離れずで歩いてくるイメージしかないんですが。 「だから、男のキョンくんの話です。で、わたしが思うように涼宮さんも考えたんでしょうね。 ある時ぽつりと言ったんです」 という訳で、朝比奈さん(大)による一昨日(改変前)の下校シーンをお送りしよう。 _ | _ |
Next → |