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キョンの消失 二日目・午後七時・B |
_ | _ | - * - ……とまぁそんな事らしい。朝比奈さんの話を聞き終えたわたしは頭を抱えていた。 オリジナルのわたしは谷口以下のアホか。ハルヒを焚き付けてどうする。 どう聞いても「わたしの秘密が知りたきゃ女にしろ」と言ってる様なものじゃないか。 わたしが頭を抱えていると、朝比奈さんはわたしを包み込むように抱き寄せてくれた。 その柔らかな丘陵がわたしの顔を神秘の世界へと誘う。一体何をしたらこんな大山を保有できるのでしょうか。 ハルヒが真顔で揉みまくる気分がよくわかる。というか犯罪でしょ、これ。 ところでわたしは何故抱かれているのでしょうか。先ほどから様子がおかしくありませんか、朝比奈さん。 もしかして未来のわたしは朝比奈さんとここまで急接近していたのでしょうか。 パニックに陥ったまま未来のわたしに対してどうやって勲一等を送ろうかと考えていると、朝比奈さんはわたしを意外に強く抱き寄せたまま、ソレを告げてきた。 声も、身体も震わせながら、それでも強く抱きしめたまま。 「いまから三十四時間後──明後日午前五時。世界の再改変が行われます。 そしてその結果──今のあなたは、そこで消失します」 - * - わたしは風呂の脱衣所で、洗面台に写る自分の姿を見つめていた。 そのままおもむろに着ていたパーカーシャツを始め、着ている物を全て脱ぎ捨てる。 おい、キョン。聞いたかい。 実はわたしは時空改変されて生み出された存在で、本物のわたしは男なんだってさ。 全くビックリしたね。よりにもよって男だぜ? この自分では少しだけ可愛いかなと自慰的に考えてた顔も、これだけは誰にも負けて無いだろうと自負していたポニーテールが似合う髪も、トップの大きさではハルヒに僅かに及ばないがアンダー差では勝利している胸も、この冬についた分はちょっと夏に向けて頑張って絞ろうかと思ってた腰も、そしていつの日にか、心に決めた相手にこれを見せなきゃならないのかと時々見たり触ったりしては悶絶するほど恥ずかしむるココも。 全ては改変による虚像だったって事なんだよ。本当、驚天動地とはこの事だな。 冬とは全く逆の立場になった。あの時はわたしが世界を消した。 今度はわたし一人だけが消えることになる。 今まで改変する側に立っていたから気がつかなかった。 いや、あの夏休みの時に古泉はちゃんと言っていたはずだ。 記憶が消えて無ければ精神に支障をきたすと。 やれやれ────こいつは全くもって残酷な話だな。 古泉。確かに消えるべき人間は、消えるという事に気付くべきでは無いよ。 実際元のわたしも、世界を変える力の責務がこれ程のものだったとは考えてはいないだろう。 今回だけは、今回ばかりは古泉の意見に賛成する。 ハルヒには全てを隠したまま安定してもらい、こんな力は早いところ消失させるべきなんだ。 たった一人の気まぐれで人が出たり消えたりする。 そんな恐るべき事実、ただの人間が背負うにはあまりにも業が重すぎる。 わたしは震える自分を強く抱き締めながら、声を殺してその場にうずくまった。 _ | _ |
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