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キョンの消失 三日目・午後十一時五十九分 |
_ | _ | - * - 夕飯ぶっちぎりで家に帰り、親に注意され食卓につく。 何故かメインディッシュのハンバーグが何者かによって半分食われてた事に関しては、妹が入浴している風呂場に裸で突撃し、シャンプーハットを装備した頭を洗ってやりながらじっくりと詰問する事にした。 「だって、今日のハンバーグおいしかったんだもん」 舌を可愛く出しながらウインク姿を見せ、妹はあっさりと白状する。 わたしは罰として、五十数えきるまで湯船の中から出る事を禁じてやった。 窓を少し開けて風を部屋に通す。 こんな時に眠っていられるはずも無く、部屋でラジオを聞き流しながら、わたしは朝比奈さん(大)から受け取ったモノを見つめていた。 即効性睡眠薬──いったいこんな物、何に使うんだろうか? ベッドで横たわりながら考える。妹の部屋から抜け出てきたのか、シャミセンはわたしの傍らで眠っていた。 ラジオから十二時を告げるCMが流れ出す。 「あと五時間か……」 そう考えても実感が湧くはずも無く、わたしは明日が今日に変わる瞬間をぼうっとした脳で聞いていた。 ピッ、ピッ、ピッ、ポーン。 そのポーンと同時に枕元に置いていた携帯が鳴りだした。 「な、何だ!?」 何事かと驚き、次に再改変について長門あたりからの電話かもと考えた。 だが充電器から携帯電話を外し、ディスプレイに表示される発信者の名前を見て、わたしは再び驚いた。 こんな時間にどういう事だ? 何故コイツから? そんな風に思いながら電話を取ると、電話の相手は相変わらず主語を抜いて話をしてきた。 『玄関を開けて』 何だ? 玄関だと? それってどこのだ? …………まさか。 わたしは部屋をそっと出て、家族を起こさないよう静かに階段を降りて玄関を開ける。 するとそこにはスポーツバッグを片手に持ち、両腕を胸元で組んで、不敵と素敵を器用に混ぜた笑みを浮かべつつ──、 「さ、明日になったわ。アンタの悩みを聞かせてもらうわよ」 そう宣言する、涼宮ハルヒの姿があった。 _ | _ |
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