ホワイトデー・カーニバル 3

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・午前十時:みくる

『……と言うわけでみくるちゃん! ここからはみんなで協力していきましょう!』
 わかりました、涼宮さん。それで、これから何処へ向かえばいいんですか?
『いつもの集合場所でいいわ。キョンの家に向かうわけだし』
 キョンくんの家に? どうしてです?
『あ、みくるちゃんに答えを言ってなかったわね。いい?』

『あたしの回答「AJI」は「味」、そして有希の「LiNe」は「線」に置き換えるの』
 ……え、ええーっと……。
『で、三人の回答を繋げて読むと……「三・味・線」となるわ』
 三味線……あっ! つまり次の答えはシャミセンさんの事だったんですね!
『そういう事。じゃあ急いで支度して来るのよ! 何としてもキョンから商品を奪い取るんだから!』
 わかりました、すぐ支度して向かいます!

 電話を切り、急いで身支度を行う。
 それにしても三人の答えを合わせないと次の答えが出ないなんて、これはキョンくんと古泉くん、はたしてどっちの案なんでしょうね。
 でもおかげで抜け駆けっぽいかな、わたしだけ遅れてるのかな、と朝からもやもやしていた気分が一気に晴れた。
 ちゃんとゴールで見ていてくださいね、キョンくん。わたしたち三人が協力したら本当に凄いんですから。
 鼻歌交じりに髪をとかしながら、みくるはカードに向かって心から微笑んでいた。


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・午前十一時三十分:ハルヒ

「あ、みんないらっしゃーい。でもキョンくんはお出かけしてるよー?」
 妹ちゃんの歓迎を受け、あたしたちは家の中へと招待された。
 ねえ妹ちゃん、あたしたちがやってきたらこう言うかも、ってキョンに言われてる事ない?
「あるよ。シャミでしょー? 待っててー」
 妹ちゃんがリビングから出て行き、暫くするとオスの三毛猫というレアな生き物を抱えて帰ってきた。

「……首輪」
 有希が目ざとく指摘する。そういえばシャミセンが首輪してるなんておかしいわね。
 ねえ、これ外していい?
「いいよー、シャミもきつかったよねー」
 あたしはシャミセンから首輪を外す。キョンが何か仕込んだとしたなら、おそらくこれだ。
「あ、涼宮さん。ここに何か書いてありますよ」

 みくるちゃんが指し示したのは首輪についたネームプレートの部分。確かにそこには何かが書かれていた。
 シャミセンの名前、では無い。これは……

『情報連結:RUT<<』

 どっかで見たような言葉を前に、あたしたち三人は顔を突き合わせていた。


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・午前十一時三十分:長門

 回答は既に得ている。後はその場所へ向かうのみ。

『情報連結:RUT<<』

 わたしたちはこのような言葉を首輪以外からも入手している。
 手紙に書かれた差出人。わたしの『TAYU』、朝比奈みくるの『ERAN』、涼宮ハルヒの『AHIE』だ。
 この四つの単語をどうにかすればいい。全二十四パターンの並べ替え、そこから精製される文字列の解析。
 そのような事は単純作業だ。

 回答は既に得ている。後はその場所へ向かうのみ。
 だが、わたしは少し反省していた。故に、その回答を未だ二人には告げていない。
 何故この順番で並べるのか、彼はちゃんと示していた。わたしはそんな彼の意思を尊重したい。
 だから、わたしは二人がそこに思い至るまで何も言わない事にした。

第4話

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